どの程度まで補償してくれるのか
業者は引越しのプロ。梱包作業や搬入・搬出の手際の良さには驚かされますが、引越しにはトラブルがつきもの。引越しのプロといえども、荷物を落として壊してしまったり、壁にぶつけて傷を付けてしまったりすることだってあり得ます。 もし運悪くトラブルに遭ってしまった場合、どのように対応すれば良いのかを詳しくお伝えします。実は、私も引越しで破損のトラブルに遭ったことがあります。 そのときの体験したことは引越し中に起こった荷物の破損にて詳しく書きましたので合わせてご覧ください。。
作業中に破損を発見した場合
速やかに現場担当者に申告・確認してもらいます。ここで、現場担当者は補償等について詳しくない場合が多いため、見積もりに来た「担当者」にも連絡をします。
具体的な補償については後日、担当者や責任者と話し合うことになりますが、まずは責任の有無を確認するのが先決。
破損した瞬間を目撃したのであれば業者の責任であることに間違いはありませんが、本当に作業で破損したのか、もともと破損していたかどうかを確認してください。 業者の過失が確認された場合、この後、補償についての話し合いになります。
作業後に破損を発見した場合
この場合、発見したらすぐに業者に連絡することが大切です。
なぜなら引越しによる破損・紛失に対する補償期間は3か月と決められているからです。また、期間が空いてしまうと、本当に引越しによる破損かどうかを証明することが難しくなってしまい、結果として補償されないということになりかねません。
そうならないためにも、作業終了後、早い段階で一通り荷物をチェックしておきましょう。当分使わないであろうものの入った段ボール箱も、1度は蓋を開けて確認しておくことが大切です。 この場合も業者が過失を認めたら、補償についての話し合いになります。
尚、依頼者の持ち物(段ボール箱や家具・家電など)や持ち家に破損があった場合は業者と依頼主での話し合いになりますが、賃貸物件の壁・床・ドアなどの破損については業者と大家さん・管理会社との話し合いになります。 賃貸物件でトラブルに遭遇した場合は速やかに大家さん・管理会社に連絡をしましょう。
破損トラブルが起こった場合、どのように補償されるの?
引越しにおける破損・紛失については、国土交通省が定めている「標準引越運送約款」(業者と消費者(依頼者)との間のトラブルを防ぐためのルール)が適用されます。 前出の「補償期間は3か月」というのも、この約款に記載されています。
この約款によって補償すべきと判断された場合に業者は補償の手続きを行います。ちなみに、業者は万一の事故に備えて運送業者貨物賠償責任保険に加入しているため、この保険によって補償されることになります。補償の上限金額や補償の範囲は業者により異なる場合がありますが、通常は上限が1000万円程度。
ただ、破損の全てにおいて補償されるわけではなく、依頼前にすでに生じていた荷物の不良や破損についてはこの保険は適用されません。 また保険に加入していても、業者が保険を使わない場合もあります。
なぜなら、自動車保険を使うことで等級が下がり保険料が上がってしまうのと同じように、保険会社に保険金を支払ってもらうことで、業者が保険会社に支払う保険料が上がってしまうのを避けるためです。 特に、補償金額が高くない場合はあえて保険を使わず、実費弁償という形で補償してくれる場合が多いです。
補償の内容としては、修理・代替品の用意・相当額の弁償金がありますが、原則は修理。 修理は現状復帰が原則であるため、たとえ見栄えが悪くても使用に支障がなければそれで修理完了ということになってしまいます。
この場合、納得できる修理内容ではなかったとしても、これ以上要求せずに受け入れてしまうことが多いですが、破損トラブルにおいてこちらは被害者。納得できないのであれば、しっかりとその旨を業者に伝えましょう。 そうすることで、別の(もしくはプラスアルファの)対応をしてもらえることも多いです。
また、修理の仕上がりに納得ができなかった場合、修理の状態を受け入れた上で示談金を支払ってもらえる場合もあります。ただ、示談金の相場は数千円(高価なものの場合は数万円)なので、残念ながら同じものを購入できるほどの金額は受け取ることができません。
大手引越し業者は会社名に傷をつけないためにも割とスムーズに補償されることが多いですが、中小規模の引越し業者についてはそもそも「標準引越運送約款」を採用していないこともありため、業者によって補償の内容に差が出ることもあることを覚えておきましょう。
見積りのときに必ず、破損補償も確認してください
自分でできる!破損トラブル防止
思い入れのある家財が思いがけず傷つけられてしまった時のショックは相当なものです。
そうならないには、どんなことに気を付ければいいのかをお伝えします。
引越し前にすること
まず引越し業者を選ぶ時点で、契約書に「標準引越運送約款」の記載があるかどうかを確認する必要があります。多くの場合、契約書の裏面に記載されていますので、必ず確認しましょう。
また、契約の際に約款についての説明を避ける業者は信頼してはいけません。さらに、運送業者貨物賠償責任保険に加入しているかどうかの確認もしておきましょう。 見積もりの際に万が一トラブルが発生した時にどのような対応をしてもらえるのかを聞いておきましょう。
ちなみに、自身で保険に加入するという方法もあります。「引越荷物運送保険」というもので、運送業者からの賠償が得られない場合の備えとなります。 高額な家財を所持している場合などは加入しておくと安心でしょう。 保険料は数千円~。業者を通じて加入できるので、契約の際に担当者に確認して下さい。
また、破損の危険がありそうな家財については、引越し前に写真(日付があった方が良いでしょう)を撮っておきましょう。 そして、段ボール箱に梱包する際は、乱暴に扱われても破損しないようにしっかりと梱包すること、そして壊れやすいものが入っている段ボール箱については大きく「ワレモノ注意」と記載して、誰が見てもすぐに分かるようにしておくことが大切です。
引越し当日にすること
搬入・搬出の際、作業員に「気を付けて運んでください」「壊れやすいものが入っていますので」など、声をかけることも大事です。『神経質なお客さん』だと思われれば、より気を付けて作業してもらえるでしょう。
そして、作業中は、どうしても荷造りが終わらずに最後までバタバタと片付けや掃除に追われてしまうものですが、できるだけ業者の動きが見渡せる場所で作業をするようにしましょう。 破損トラブルはないに越したことはありませんが、そのリスクをゼロにすることは不可能です。せめて泣き寝入りすることがないように、しっかりと備えをしておきましょう。
引越し中に起こった荷物の破損
今まで同じ区内の超近距離引越し、九州から東京や大阪への長距離引越しがあります。 その中でも特に印象に残っているのが福岡から東京への引越しです。 このとき社会人になって10年。転職が決まり、福岡から東京の引越しが決まりました。
今回は、長距離引越しだったので費用を抑えるために荷物は必要最小限にしようと決めました。 持っていくことにした家電はテレビ、冷蔵庫、洗濯機、スタンドタイプの掃除機の4点。 そして、電話帳で適当に決めた2社に見積もりをお願いし、見積り額が安かった業者に決めました。
引越し当日。パッキングを完全に済ませて待っていると、業者が荷物を引き取りに来ました。すると、私がお願いした「B引越センター」ではなく、おなじみの「S便」のトラックなのです。私は「あれ、御社にはお願いしていませんが?」というと、「いえいえ、B引越センターさんの依頼で来ました。荷物は全て小口便としてうちから運びます」と言うではあえりませんか・・・
見積もりに来たときも、支払時にもB引越センターの担当者は、そんなことはまったく話していません。「これは、いやな予感がする」と思ったのですが、転職期限は決まっているし、いまさら取り消すこともできません。しかたなく、「くれぐれもよろしくお願いします」と念押しして、荷物を送りだしたのでした。
2日後、引越し先の東京のアパートで待っていると、約束の時間より1時間遅れて荷物が届きました。「S便」の小口荷物として、家電製品や段ボール箱、タンスなどが搬入されました。通常の小口便と違ったのは、一応大きなものは指定場所まで搬入してくれることでした。まあ、こちらは引越しを頼んだのですから当然ですけれどね。福岡で搬出したすべてのものが搬入されたことをリストでチェックして、「S便」の担当者は引き上げていきました。
ここからは孤独な闘いです。ひとつひとつ開封して、搬入したすべてのものをあるべき場所に配置していかねばなりません。その日は4月上旬でしたが、天気がよく、ちょっと作業すると汗ばむくらいでした。そこで、アパートに来る前に買っておいたドリンクを冷蔵庫で冷やそうと、まずは冷蔵庫を稼働させることにしました。
まず、冷蔵庫を覆っていた段ボールを外そうとすると、冷蔵庫が傾くのです。慌ててすべての段ボールを取り払い、確認してみると、冷蔵庫の足の部分が片方曲がっているのです。引っ張ってみてもビクともしません。ペンチでつまんで直そうとしてもまったくだめ。しかし、ここで放棄したら片付かないと思い、段ボールを曲がった足の下に入れて左右のバランスをとり、なんとか冷蔵庫を使用できる状態にしました。
その後、ちょっと休憩も兼ねてテレビでも見ようと思い、段ボールで覆われたテレビを開封することにしました。すると、ブラウン管を覆うプラスチックの枠が大きく破損していたのです。「どうすればここまで壊れるのだろう」と思えるレベルで、プラスチックが完全に割れてしまっていました。今度こそ唖然としてしまいました。ここで、「B引越センター」に連絡しました。
私の担当者が電話口に出たので、搬入した家電(冷蔵庫とテレビ)が大きく破損していることを訴えました。すると、何度も謝罪し、「状況確認のため、すぐに担当者を伺わせます」とのことでした。「必ず明日来てほしい」と念を押してから、電話を切りました。
翌日、部屋の掃除をしながら待っていると、業者がやってきました。すると、またしても「B引越センター」ではなく、「S便」の担当者でした。まあ、確かに荷物を運んだのは「S便」ですが、「B引越センター」も、せめて謝罪くらいはするのではないかと思っていたのですが、考えが甘かったようです。
「S便」の担当者は、冷蔵庫の足とテレビの枠の破損箇所の写真を撮り、調査票にこまかく書き込んでいました。このとき「冷蔵庫がないと大変困るため、早急になんとかしてほしい」と訴えました。すると、冷蔵庫とテレビの購入金額を聞かれました。 冷蔵庫とテレビはどちらも8年ほど前に購入したので、だいたいの価格は覚えていたので、その価格を伝えました。 最後に、私が調査票に確認のための印鑑を押して終わりました。
5日後、「S便」から電話があり、「通常は同じ製品を購入して弁済するのだが、すでに両製品とも生産中止のため、どうするか検討中です。少々、お待ちいただきたい」と言われました。ただ、これ以上は待てないと思い、「冷蔵庫がないと生活上支障があるため、購入金額以下の冷蔵庫とテレビを探して自分で購入するので、その購入代金の支払いをしてほしい」と伝えました。
その後、おそらく上司へ相談していると思われる長い「お待たせメロディー」のあと、「承知しました。領収書を送ってください」という回答をもらい、電話を切りました。 早速、「大手家電量販店」に行き、冷蔵庫とテレビを購入しました。 そして、領収書を「S便」の担当者に郵送し、電話でその旨を伝えました。あまりの早業に「S便」の担当者は少し驚いていたようです。
その後、家電量販店から冷蔵庫とテレビが届き、破損した冷蔵庫とテレビを引き取ってもらいました。 翌週には「S便」から私の銀行口座に冷蔵庫とテレビの購入代金が振り込まれていました。 これで、今回の荷物の破損トラブルは無事解決となりました。
見積りのときは「補償内容の確認」だけでなく「自社スタッフ・トラックの確認」も忘れないようにしてください