住宅展示場を見学する

そろそろマイホーム?

結婚して1年、生活も落着き、新しい名字にも慣れ、そろそろ「新婚さん」とも呼ばれなくなってくるころ。 ある休日、県北部に住んでいる私たち夫婦は、夫のいとことランチをするために県南部まで車で出かけました。電車で行くと2時間かかってしまうのですが、ちょうど新しく高速道路ができたタイミングだったため、車だと1時間で到着です。

集合場所近隣のパスタ店で昼食を済ませ、「じゃあまたねー」、と別れた後。まだ15時頃だったこともあり、「せっかくここまで来たのにこのまま帰るのももったいないね」と、特に目的もなく国道を直進していた時のことです。 たまたま目に付いた大きな住宅展示場。

少し前に友人夫婦がマイホームを建てたこともあり、「我が家もいつか建てたいね」「子どもができる前が良いね」などと話していました。 そこで、ちょっと寄ってみようかということで人生で初めて住宅展示場に入ってみました。

様々なハウスメーカーの住宅が集まった「総合住宅展示場」のようで、休日だということもあってか沢山の人が集まっていました。 「いつか建てたいね」と思っていたくらいなので、私たち夫婦はマイホームに関しての知識はゼロ。

そんな状態なので、どんなハウスメーカーがあるのか、どんな特徴があるのか、金額的にはどこがどうなのかなど、全く分かりません。 とりあえず入りやすそうな展示場に入ってみることにしました。

まず1軒目。テレビで聞いたことがあるような、無いようなハウスメーカーです。靴を脱いでお邪魔すると、年配の方が住んでいそうな内装。玄関回りもどっしりとした趣のある感じでした。 ここはちょっとイメージと違うなーと思っていると、ハウスメーカーの方が「よろしかったらこちらにご記入ください」と住所・氏名などを書く用紙を持って現れました。 住宅展示場のシステムを知らなかった私たちは、特に魅力を感じなかったハウスメーカーにも関わらず記名してこの家を出ました。

2軒目。テレビで聞いたことがあるハウスメーカーです。中に入ると営業と思われる中年の男性が案内してくれました。 モデルルームの説明などを聞いてもよく分からない単語がチラホラ。「私たち、ひょっとして場違い?まだマイホームとか考える年齢じゃなかったかな?」と徐々にテンションが下がってきました。

「良かったらお掛けください」と応接セットのあるところに通されてしまった私達。すぐにでも帰りたい気分だった私に対し、夫はそうでもない様子。「話を聞くだけ聞いてみよう」と椅子に腰かけました。 どの辺りに建てようと考えているのか、いつ頃に建てたいのかなど、夢のマイホームについて質問され、「まだ細かいことは未定なんですけど」と返す夫。

「この辺りの坪単価は○○万円」などと説明は続きました。 そのやり取りを見ていると「どうせ君たちのような若造には建てられないだろうけどね」と見下されているような、何だかとても嫌な気持ちになり、一刻も早く立ち去りたい気持ちになりました。

もちろんこの営業さんもそんな風に思って接客している訳はないのでしょうが、「今すぐマイホームがほしい」と考えてやって来たわけではない私たちには合わなかったようです。

運命の出会い、ハウスメーカー内定

「マイホームって、もっと年をとってから建てるものなのかなー?」「場違いかもしれないからもう帰ろうか」なんて話をしたものの、「せっかく来たからもう一軒」ということで、今度はテレビCMでも度々見かけるハウスメーカーの展示場へ行きました。

しかし、やや足取りは重く、「また見下されたら嫌だなー」と思いながら恐る恐る展示場の玄関に入ります。 ガチャっとドアが開き、そこに現れたのはさわやかなメガネの営業マン。「こんにち!」と優しい笑顔で声を掛けられたことで、それまで何となく張りつめていた心が緩みました。

この営業マンは私たちと年代も同じくらいのようなので、緊張することなく対等に話をすることができそうです。 ようやく本来の調子を取り戻すことができた私達。

「あちこち回りましたか?」という質問をきっかけに「知らない言葉がたくさん出てきてお手上げだったこと」「まだ本格的にマイホームについて考えている訳ではないこと」「マイホームについて何も知識がないこと」など、私たち夫婦の口からは今まで言いたくても言えなかったことがどんどん湧き出てきました

そんな話を真剣に聞いてくれました。決して見下すことなく、親身になって対応してくれるからこそ、思ったことを正直に話すことができました。 例えば「この展示場で一番高いのはどこ?」とか「ここは住宅メーカーの中でどのくらいの位置なのか」など、今思えば失礼極まりないことも、悪びれもせずに質問してしまったのですが、嫌な顔ひとつせずに本気で答えてくれました。

この段階で、その営業マンのハウスメーカーを見学する前だったのにも関わらず、夫も私もすっかり、この営業マンが気に入ってしまいました。 何でも正直に話せる空気感。そして真摯に対応してくれる。 この営業マンとの出会いが、私たちの運命を変えました。

和んだ空気感のまま展示場を見学すると、他のハウスメーカーでは上っ面の「いいね」だったのが、心から「いいねー」と思うことができ、何となく将来の自分たちの姿が想像できました。 「こんな感じが良いな」「ここも素敵だな」「ここはもう少しこうだと良いな」など、住宅に関する知識がほどんどないのにも関わらずイメージだけが膨らみます。

帰り際、私たちの口から出た言葉は「また来ます」。それに対して「お待ちしています」と期待を裏切らない返答をしてくれる営業マン。 私達夫婦には、もはや他のハウスメーカーは眼中にありません。「家を建てるならこの営業マンにお願いしたい」「これ以上の出会いは絶対にない」

たまたま立ち寄った住宅展示場で運命が決まった私たち。色々な偶然が重なって、運命って作られていくのですね。 この日をきっかけに、マイホーム計画が動き始めるのでした。

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マイホーム計画、徐行ながらも進行

まだ先の話だと思っていたマイホームですが、展示場での出会いをきっかけにマイホーム計画が前に進み始めました。 ハウスメーカーはもちろん上記のさわやかな営業マンのところです。

大抵の人にとって人生で最も大きな買い物である家。そんな重大なことを、こんなに簡単に決めてしまって良いのかと不安に思うことももちろんありました。しかし、きっと他の展示場を回ったとしても、この営業マンを上回る人に出会えないだろうと夫も私も確信していました。

それならばマイホームはもうこの営業マンにお願いするしかありません。 のちのち分かることですが、この営業マン、かなりのやり手のようで、営業成績抜群だということ。 でも、その理由が分かります。きっと様々なタイプのお客さんに合うように、空気を変える術を持っているのだと思います。それだけでなく、何といっても仕事が丁寧。

たくさんのお客さんを抱えているにも関わらず、一つ一つの仕事が丁寧で気が利くのです。思わずいつ寝ているのかと心配になってしまうくらいです。 ただ、我が家のマイホーム作りを手伝ってもらおうと、夫婦会議で決定したものの、このときに決まっていたことといえば「建売ではなく注文住宅を建てたい」ということのみ。

具体的な時期・場所・費用はほとんど決まっていませんでした。 注文住宅を建てた先輩夫婦から「打ち合わせに相当時間がかかるから、注文で建てるなら子どもが生まれる前が良い」と聞いていたこともあり、子どもを考える前に家のことを考えようか、ということは夫と話していました。

結婚3年目くらいに子どもができたら良いなと思っていたので、結婚2年目に突入するこのタイミングが今思えばマイホーム計画を進めるにはちょうど良い時期だったようです。 展示場に行ったことをきっかけに、建てるなら将来のことを考えて「私(妻)の実家に近い方が良いかな」「費用は…両親・祖父母のスネをかじるのと住宅ローンかな」など少しずつ考え始めました。

そんなある日、営業マンから手紙が届きます。中を開けてみると、不動産情報の書類が数枚と、手紙が1枚。そういえば前回展示場にお邪魔した時に、マイホームを建てるにあたり希望する地域の話をチラッとしたような気がしますが、その話を受けて条件に合った土地を探しをしてくれたようです。なんてありがたい話なのでしょう。

私たちが希望する地域は、現在住んでいるアパートからは車で1時間~1時間半程度。夫と私の休日が合わないということもあり、2人で土地探しに出かけるのはなかなか難しいところでしたが、本当に助かりました。本当にこの人に出会えて良かった。

土地、決定

数週間後、私たちは「また来ます」という約束通り、展示場に向かいました。教えてもらった土地を一緒に見に行く予定です。 この日、営業マンと会うのは2回目でしたが、会話が途切れることもなく、楽しく土地探しをすることができました。

当然1度見て回っただけで決められるわけではないので、その後も何度か土地探しに同行してもらいましたが、プロならではの観点で見てもらえるので本当に助かりました。 実家の沿線沿いでの土地探しだったのですが、沿線とはいえ降り立ったことのない土地。営業マンのおかげでどんな街並みなのかが分かりました。

3回目の土地探しの時でした。とある駅前通りから続く道を通った時のこと。まっすぐ伸びた広い道路と整った街並み、大きなスーパー。 この光景を見た時に、「あっ、ここに住みたい」と思った私。このキレイに整備された歩道をベビーカーを押しながら散歩する自分の姿が想像できました。

電車通勤の夫は、通勤で確実に座ることのできる始発駅の近くの土地を希望していましたが、この街並みを見て気持ちが揺らいだようで、「家族で住むならここが良いね」と夫婦の意見が合いました。 住みたい場所が明確に決まりました。

ただ、なかなか希望通りの土地に出会うことはできません。 条件に合う土地が見つかったかと思えば建築条件付きでハウスメーカーの指定ができない等、なかなか思うようには行きませんでした。

それからしばらくたったある日、営業マンから連絡がありました。希望していた地域で私達の条件に合った土地が売りに出たということで、さっそく見に行くことになりました。 「古家あり」ということで取り壊しの費用がかかるということでしたが、環境的には大満足。

駅から徒歩10分以内、近所にスーパーやドラッグストアがあり、目の前の道は道幅6m。 希望していたよりも1~2坪程度狭い土地ではありましたが、広い庭を作る予定も無かったので許容範囲です。

ただ、1点気になることがありました。それは「隣家が近いので、日当たりの関係でリビングを2階にする必要がある」ということです。 リビングが2階というのはあまり考えていなかったので即決はできませんでしたが、その後、何度か夫と2人で見に来たり、資金援助してもらう予定の実母に見てもらったりした結果、納得。 土地、決定です! ここにマイホームを構えることにしました。

ハウスメーカーとの初・打ち合わせ

私達が購入を決めた土地には古家があったので、土地購入後に解体作業を行う必要がありますが、その解体費用と土地購入代金は営業マンの頑張りによって若干金額を減らしてもらうことができました。 あなたを信じて良かったー。

土地が決まると、今度はハウスメーカーをどこにするかを決めなければいけません。実は土地の購入は決定したものの、まだハウスメーカーとの契約はしていません。 この先の流れとして、まず私たちの希望を基に日当たりや隣家の窓の位置などを考慮して設計図を作成してもらいます。

この設計が気に入った場合はそのまま契約しますが、気に入らなかった場合は満足行くまで描き直してもらい、それでも満足のいく設計図が出来上がらない場合は残念ながらこのハウスメーカーとの契約を諦め、他のハウスメーカーや工務店に依頼するということになるかもしれません。

そう、散々お世話になっておきながら、設計図の出来上がりによっては営業マンのハウスメーカーと契約できないということもあり得るのです。 そんな重要な最初の設計を担当したのが若手の設計士さん。この人選もお客さんのタイプに合わせて決めているようです。

「若手ですが腕は確か」という設計士さん。話してみると営業マン同様に話が合い、楽しく打ち合わせを進めて行くことができそうな予感がします。 さて、初めての打ち合わせを行う場所は、なんと展示場。

よく見ると応接セットがいくつか配置されており、何組かが同時に打ち合わせを行えるようになっています。 展示場の意外な使用方法を知ったところで、初めての設計図を見ました。

私達が日常生活で使用する「用紙」のサイズはせいぜいA3ですが、設計図が描かれていた用紙はA2サイズ。まずその大きさにビックリ!こんなに大きな用紙を扱うということは、相当大きなプリンターがあるんだろうなー、なんて思いながら設計図に目を向けると、「○○様邸」と書かれているところを発見!「あー、本当に家を建てるんだー!」と実感が湧いてきました。

若手設計士さんに説明をしてもらいながら設計図を見ていきますが、方向音痴で空間認知能力が低い私は説明されてもイメージが湧きません。それに対して方向感覚バッチリで地図の読める男である夫は、しっかりと理解できている様子です。

「うーん、よく分からない」と正直に言う私。そんな私が理解しやすいようにと、若手設計士さんは分かりやすく立体的に描いて説明を加えてくれました。さすが設計士さん、奥行きのある絵を描くのが上手い! 理解ができない私を置き去りにせず、理解できるように説明しようとしてくれる優しさ。心にしみました。

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ハウスメーカーと契約

2人のおかげでしっかりと完成した家をイメージすることができた私。お陰で、デザインについてしっかりと希望を伝えることができました。 「玄関から子ども部屋に行くまでの間に必ずリビングを通るようにしたい」「玄関ドアからトイレが見えないようにしたい」

一方、設計士さんからは、「西日が入るのでキッチンの向きはこちらが良いでしょう」「道路側には洗濯物を干しにくいでしょうから、メインの物干し場は通りに面していない隣家の壁側に」、等々、プロならではアドバイスももらいながら、何パターンもの設計図を描いてもらいました。

詳細は後々修正していくので、大まかな設計の方向性としてどうか、契約できる設計かどうかを判断していきます。 何度か打ち合わせを行い、気に入った設計図にさらに自分たちの希望を組み込んでいきます。

「プロパンガスではなく都市ガス」「お風呂のドアは折りたたむタイプでなく1枚のドア」「屋根には太陽光パネル」など、納得できるまで書き換えてもらい、そしてついに完成。大まかな金額も算出されます。

ここまで何度にもわたる打ち合わせの中で、夫の会社・源泉徴収の情報を基にして住宅ローンが組めるかどうかの予備審査も終了し、このハウスメーカーでマイホームを建てられるだけの融資が受けられることはほぼ決定。

あとは私たちの気持ち次第。この設計図、この金額で契約できるかどうか、判断の時が来ます。 人生で最も大きな買い物であるマイホーム。「サイン=住宅ローン」を背負うということ。また、「サイン=一生の居住地を決める=人生を決める」ということにもなります。

ここまではトントン拍子で来ましたが、さすがにこの時はあれこれ考えました。 実は「想定よりも金額がかなり上回っていたこと」「地元の工務店に頼めば恐らくもっと安価に家が建てられるということ」「夫の通勤時間が長くなってしまうこと」ということがわかり、何度も夫婦会議を行いました。

しかし、もう最初から結果は出ていたも同然。「このハウスメーカーで家を建てたい」という気持ちはそう簡単に揺るぎません。 結論を出すまでに数日を要しましたが、この設計図でマイホームを作ってもらうことにしました。

本契約を行ったのは夜10時くらいだったでしょうか。すっかり暗くなった展示場で、夫が書類にサイン・捺印しました。 まさに、人生が決まった瞬間。あの光景は今でも忘れられません。

設計や契約内容はもちろん満足していましたし、何よりこのハウスメーカーの人や雰囲気がすっかり気に入ってしまった私達。 この先、どんなことが待ち受けているのか、ドキドキワクワクの始まりです。

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